<糸と風合について>
現代の紬は、一般的には効率よく織ることができるよう、
またデザイン性(表現性)を優先するためにも
毛羽や節のない滑らかな生糸を経(たて)糸に使ったものが多く見受けられます。
一方、櫻工房の紬は、経糸にも座繰りの節糸や玉糸、真綿紬糸のやや太めの糸など
節のある糸を使っています。
経に節のある糸を使うと、繊維が絡み合うため織るときの難しさがあります。
そのため手間もかかります。
しかしそれによって経糸と緯糸がしっかり組み合い、
織り密度を上げずとも堅牢な布を織ることができます。
さらにそれは布としての柔らかさ、着心地の良さにも繋がるのです。
紬は固くて着にくいとおっしゃる方にもお試しいただきたいと思います。
また、絹の特徴としては、人の肌に最も近い繊維で、
保温性、吸水性、通気性にすぐれていますが、
絹の効果をさらに高めるよう、絹糸本来のウェーブを伸ばさないよう
さまざまな注意をはらって制作しています。
紬はしっかりと織られていなければなりませんが、
当工房の紬は堅牢でありながらも固すぎず、
身にまとった時の布のバイアスもきれいにでるのです。
少し太めの糸を使っていますので、冬は暖かく、
蒸し暑い時期にはまとわりつかず吸放湿性があり、裾捌きもよいです。
洗い張りをするごとに、表面の毛羽が取れ、絹の艶、滑らかさも出てきます。
<単衣を長く愉しむ>
一般的に単衣紬は着る期間が短いと思われがちです。
当工房の紬は前述のような糸や織りの工夫によって、
単衣に仕立て、3月から11月位(盛夏除く)まで襦袢を替え、
羽織と合わせ長く着ることができます。
ものによっては真冬にも着用可能なものもあります。
初心者の方で一度に何もかも揃えられないという場合にも、
まずは羽織、コートなしでも着用できる4月~10月(盛夏を除く)の時期に
単衣紬を着はじめるのもよいかと思います。
着ることにまず慣れてから、少しずつ羽織やコート、
袷の襦袢を揃えていけばよいと思います。
※単衣の着姿をご紹介しています→「緑陰」「花蕾」「石の花」「此の手縞」
*肌着について
そして、「ASAFUKU+櫻工房」の共同企画による、
ローライズステテコと合わせて着用してもらえば着心地も申し分ありません。
ヘンプは吸湿性、速乾性、抗菌性など、他にも様々なすぐれた特徴があります。
肌着として最高の素材と思います。
麻製品は夏のものと思いがちですが、実は冬にも着用できます。
麻は多孔質な繊維で空気をためてくれます。
最初に肌にふれたときは冷たい感じなのですが、すぐ暖かくなってきます。
一年を通してお使いいただけます。
上質のヘンプの糸は洗うほどに柔らかさも増してきますので、
着物の時だけでなく普段にもお使いいただきたいと思います(スカート下やパジャマにも)。
ヘンプ肌着の詳細はこちらから。
<草木で染める>
染色は工房の庭木や近隣で入手できる身近な植物
(桜、梅、白樫、木斛、楊梅、梨、リンゴ、柿、枇杷など)を中心に
季節に応じて染め分けています。
生木から染める生きた色合いを大切にしています。
糸は色の堅牢度を増すために半年以上寝かせ、空気酸化させてから使います。
<デザイン>
季節感や自然な感覚を大切にし、飽きのこないモダンなデザインを心がけています。
空間性や地の部分の美しさも重要な布の奥行、力となります。
帯や羽織、小物との取り合わせのことも考慮しています。
着る方を引き立て、安らぎを感じてもらえる、優しさと堅牢さをもった、
自然な美しさをめざしています。
作品はこちらでご覧頂けます>>
中野みどりの紬織について紹介しています>>>「布のかたち、身を包むかたち」 笹山央(工芸評論家)