[ 染織家(紬織)・中野みどりの仕事 ]

紬の着物を織り始めて38年の月日が流れました。

まずは技を磨き、素材の特性を知り、文様と向き合い、取合せの美を目指し
本当に“美しいもの”とは何かを探し求めて歩んできました。

櫻工房では、着物、帯、ショール、全て手つむぎ糸、座繰り糸による制作です。
布に立体感があり、柔らかい着心地や風合い、深い光沢の良さが特徴です。
染は植物の生木を中心に染料として使っています。

本来、紬は使われ、洗われて美しさを増していくものです。
そのために選ばれた糸や染材、道具、技法、デザイン、色、
仕上げに至るまでトータルで考えています。

現代に生きたかたちで創ること、使うことを繋いでいきたいと思います。

そのためには現在途絶えかけている“着ることの文化”が育たなければなりません。
そこで「紬きもの塾」も2009年から毎年開催しています。

桜の花が自然に美しい姿を呈してくれるように、
櫻工房の“自然体”の紬織りをぜひ身にまとってみてください。

2015年3月  中野みどり(櫻工房主宰)

狩野養川院雪月花

 


[ 中野みどりプロフィール ]

1977年 宗廣力三(人間国宝 紬縞織・絣織)に師事

1980年 独立

1989~1996年 日本伝統工芸展、新作展、染織展などに入選

1990年 初個展(ミワギャラリー・銀座)

1996年 欧州を旅する

1997年 「地織りの会」主宰(2006年まで)

1999年 『染織α』No.224に寄稿(都市の地織りを目指して)

2000年 『染めと織りと祈り』(立松和平著 アスペクト刊)出版記念展に出品

2000年 栃木県結城紬織物指導所で講演「人は布を織るように生まれてくる」

2001年 横浜朝日カルチャーセンターにてレクチャー(「都市で染め織り、生きる」)

2003年 NHK BS1の番組「JAPANOLOGY」に出演

2009年 「中野みどりの紬塾」を開設し、以後、毎年開催

2010年 個展「美しい布を織る’10」(可喜庵)

2010~16年 武蔵野美術大学工芸工業デザイン科テキスタイルコース 特別講義を行う

2012年 作品集 『樹の滴――染め、織り、着る』 を上梓(染織と生活社刊)

東京、埼玉、京都、名古屋で個展開催

 


[ 櫻工房の紬について ]

<糸と風合について>

現代の紬は、一般的には効率よく織ることができるよう、

またデザイン性(表現性)を優先するためにも

毛羽や節のない滑らかな生糸を経(たて)糸に使ったものが多く見受けられます。

一方、櫻工房の紬は、経糸にも座繰りの節糸や玉糸、真綿紬糸のやや太めの糸など

節のある糸を使っています。

経に節のある糸を使うと、繊維が絡み合うため織るときの難しさがあります。

そのため手間もかかります。

002 (1280x853)

しかしそれによって経糸と緯糸がしっかり組み合い、

織り密度を上げずとも堅牢な布を織ることができます。

さらにそれは布としての柔らかさ、着心地の良さにも繋がるのです。

紬は固くて着にくいとおっしゃる方にもお試しいただきたいと思います。

015 032 (853x1280)

また、絹の特徴としては、人の肌に最も近い繊維で、

保温性、吸水性、通気性にすぐれていますが、

絹の効果をさらに高めるよう、絹糸本来のウェーブを伸ばさないよう

さまざまな注意をはらって制作しています。

紬はしっかりと織られていなければなりませんが、

当工房の紬は堅牢でありながらも固すぎず、

身にまとった時の布のバイアスもきれいにでるのです。

少し太めの糸を使っていますので、冬は暖かく、

蒸し暑い時期にはまとわりつかず吸放湿性があり、裾捌きもよいです。

洗い張りをするごとに、表面の毛羽が取れ、絹の艶、滑らかさも出てきます。

 

<単衣を長く愉しむ>

一般的に単衣紬は着る期間が短いと思われがちです。

当工房の紬は前述のような糸や織りの工夫によって、

単衣に仕立て、3月から11月位(盛夏除く)まで襦袢を替え、

羽織と合わせ長く着ることができます。

ものによっては真冬にも着用可能なものもあります。

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初心者の方で一度に何もかも揃えられないという場合にも、

まずは羽織、コートなしでも着用できる4月~10月(盛夏を除く)の時期に

単衣紬を着はじめるのもよいかと思います。

着ることにまず慣れてから、少しずつ羽織やコート、

袷の襦袢を揃えていけばよいと思います。
※単衣の着姿をご紹介しています→「緑陰」「花蕾」「石の花」「此の手縞

 

 

 <草木で染める>

染色は工房の庭木や近隣で入手できる身近な植物

(桜、梅、白樫、木斛、楊梅、梨、リンゴ、柿、枇杷など)を中心に

季節に応じて染め分けています。

生木から染める生きた色合いを大切にしています。

糸は色の堅牢度を増すために半年以上寝かせ、空気酸化させてから使います。

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<デザイン>

季節感や自然な感覚を大切にし、飽きのこないモダンなデザインを心がけています。

空間性や地の部分の美しさも重要な布の奥行、力となります。

帯や羽織、小物との取り合わせのことも考慮しています。

着る方を引き立て、安らぎを感じてもらえる、優しさと堅牢さをもった、

自然な美しさをめざしています。
作品はこちらでご覧頂けます>>